初心者向けで参考になるAI本をご紹介
最近、取引先に行ってもビッグデータ分析の話から進んでAIに比重が移ってきたと実感しております。 では、AIとは何ぞや、とこれから学んで行きたい人やAIビジネスを志向している人におすすめのAI入門書をご紹介してゆきたいと思います。
なお、私は現場でデータビジネスを担当している文系出身ビジネスパーソンで、長くビッグデータ関連のビジネスに従事してきており、最近徐々にAIプロジェクトにも関連するようになりました。
その視点からAIの活用に役立つ本をまとめてゆきたいと思いますので、ご了解ください。
AIについての知識を深めるのに役立つ本
人工知能は人間を超えるか 松尾豊
日本の人工知能研究の第一人者として名高い東大の松尾教授による本。副題はディープラーニングの先にあるもの。何故、今注目を浴びているのか、その理由やそれに至るまでの歴史、それにまつわる誤解、今後どのように活用されうるのか、等々について第一人者が丁寧に語っている本。
特に何故今ディープラーニングがもてはやされているのか、その辺りが詳しく書かれていて非常に参考になった(p147 「人工知能研究における50年来のブレークスルー」)。
ポイントは大量のデータから、”特徴表現”をコンピュータが人間に教わらずに導き出すことができるようになった、ということだそうだ(これまでは”自ら”というのが解決できない大きな壁となっていたとのこと。)。
また、ディープラーニングの先にどんな革新がありうるのか、ということについても著者の知見が披露されていて、今後の世の中を考える上で参考になった。現段階での人工知能に関する基本書的な位置づけを獲得している書物であることは間違いない。必携の一冊。
※ソフトバンクワールドでの本書と同じタイトルの松尾教授の講演
【SoftBank World 2016】 人工知能は人間を超えるか 松尾 豊 氏
人工知能の核心 羽生善治 NHKスペシャル取材班
少々前にNHKスペシャルで放映された番組を書籍にしたもの。当世一の知性として周囲が認めるところである将棋の羽生善治さんとNHKスペシャルのディレクターによる共著。
羽生さんを起用したり、ディープマインド社を取材したり、というのがなんともNHKならではで贅沢な感じ。
本書の特徴づけているは、人間の知性と人工知能の違いについて、羽生さんを媒介して語られる点。
人工知能のあり方に迫るだけではなく、人間の知性を代表して対比される将棋棋士の思考回路のようなものまで垣間見れるところだと思う。
人工知能の特徴について、勉強をされていて、深い視点で語られていて、流石と感じさせられた。
ちなみに昨今人工知能系で話題になった事象がかなりの割合で語られているので、比較的新しい重要なニュースを押さえておくこともできる。
一読して、人工知能をどう活用していくか、ブラックボックス的になっていて分かりにくい人工知能を、ディープラーニングを、理解する絶え間ない努力が必要だ、ということを思わされた。
誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性 田中潤 松本健太郎
人工知能でビジネスをやっているバリバリの専門家かつShannon Labという会社(ホームページによると、測度論、経路積分、論理、ファジー論理、現代論理学などの数理技術を駆使したサービスの研究開発をしている会社だとのこと)を経営している田中さんとアドテク系の会社でマーケティングメトリクス研究所というデータ分析の研究所の代表をしている松本さんの共著。
人工知能とは何なのか?ディープラーニングで今何ができて、何はできないのか?日本の取り組み状況はどうなのか?そういった内容について松本さんが問いかけ田中さんが答えるといった形をとった本。
学術的な内容に留まらず、ビジネスの現場がどう動いているのか?といったところまで言及されていてなかなか面白かった。日本での取り組みの遅さについて警鐘を鳴らしている部分は、ビジネスマンであれば一度読んでおくと良さそう。
人工知能の「最適解」と人間の選択 NHKスペシャル取材班
NHKスペシャルの「人工知能 天使か悪魔か」というテレビ番組の内容に周辺情報を加えて作られた本の第2弾。
進化を続ける人工知能をどう活用していくのか、話題となった将棋の電王戦をメインの材料に、タクシー・株の売買・裁判・政治・人事など話題を散りばめて現在の最新情報を提供してくれる本。
ついに将棋で頂点の名人が、人工知能ポナンザに負けた。その象徴的な出来事から、人工知能と人間がどう付き合うかの未来予想図が生々しく伝わってきて非常に興味深かった。
凄い世界がすぐそこまでやってきている、と思い知らされる本。我々はどう対処してゆくべきか、問われている問いは非常に大きいという印象。
クラウドからAIへ 〜アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場
小林雅一 著者はKDDI総研リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授の小林雅一さん。 タイトル通り、今隆盛のクラウド時代の次に来ることが確実視されているAI時代について、何故今もてはやされるようになったのかという経緯やその状況を語った本。
筆者によると、社会の高齢化や晩婚化、米のIT列強による「ビッグデータ」の争奪戦などが背景にあるのだと言う。 タイトル通り、人工知能(AI)が生み出すビジネスチャンスの記述は非常に参考になる。 また、グーグル、アップル、フェイスブッックなどのIT列強による開発競争がAIの進化に大きな影響を与えている、ということについては、頭の整理になってよかった。
P21 「ビッグデータをビジネスに活用するためにはAI技術が必要であると同時に、ビッグデータを消化・吸収することによって、AIがさらなる進化を遂げるという面もあります。両者は、いわば共生関係にあるのです。特にアップルやグーグル、フェイスブックのような米IT列強が今、AI関連の研究開発にしのぎを削っているのは、このビッグデータを奪い合っているからです。・・・」
AIの衝撃 人工知能は人類の敵か 小林雅一
上記と同じ著者による本。副題は人工知能は人類の敵か。前著からの状況変化が詳しく語られている後編的な書物。 特に(人工的)ニューラルネットの技術革命(代表的なのがディープラーニング)がコンピュータ科学やAIの爆発的な進化をもたしている、ということが語られている。
前著との違いとしては、社会全体にもたらすインパクトについて、プラスと予想される側面だけではなく、AIが人間の職を奪うのでは?だとか予測不能な進化を遂げてしまうのでは?といった危険性などについても語られている点が挙げられる。
この他、クラウド等の環境の整備を背景に、人工知能の進化とロボットの進化が相乗的に進んでいることについての記述もかなりまとまって分かり易く書かれている。
p50 人間にとって「最後の砦」とも言える学習能力を、コンピュータや機械が備えてしまえばどうなるのか?つまりビッグデータを教材にして自ら学び、変化し、無限に成長する自律的マシンに人間は対応できるのか?あるいは、どう対応していけばいいのか?これが21世紀を生きる私たち人類に突きつけられた、新たな課題として浮上してきたのです。
AIが人間を殺す日 車、医療、兵器に組み込まれる人工知能 小林雅一
同じく小林雅一さんの本。かなり物騒なタイトルだが、今後人工知能の活用を進めて行く上での課題ついて、現時点でそれが持つ危険性に警鐘を鳴らす、という形で書かれている。
本書では主に車・医療・兵器が取り上げられている。それぞれの最先端の領域でAIがどのように使われているのか、技術的な解説も交えながら分かりやすく解説されている(個人的には特に自動運転の仕組みなどが非常に勉強になった。)。
AIによる自動化を進める中で(AIがどんどん自律的に動くようになる中で)人間による制御をどう組み込むのか、組み込まないのか、その際に想定される様々な問題(場合によっては死をもたらすこともあるということだろう。)にどう対応して行くのか?AIの進化の中で人間に突き付けられた大きな問題がよく分かる。
人工知能の進化を受け入れていく中で、人間性自体が根本的に破壊される(変えることを余儀なくされる)可能性さえも生じる、という筆者の指摘が心に響いた。
人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 井上智洋
著者の井上さんは駒澤大学で経済学の講師をされている方。 学生時代人工知能のゼミに所属していたそうで、専門のマクロ経済学の知見と合わせて、人工知能の発展が、経済に与えるインパクトについて分かり易く書かれている。
著者は現在の特化型AIではなく、より発展した形で人間のように様々な知的作業をこなすことのできる汎用AIが「第四時産業革命」を引き起こし、経済成長や雇用に多大なインパクトを与える可能性が高いことに言及する。
そうした社会情勢の変化の中で、人間が人工知能といかに向き合っていくべきなのか、昨年すごく話題になったベーシックインカムなどにも言及しながら書かれている。
少々煽りもあるかもしれないが、人工知能に仕事を奪われ職に就けるのはたった1割というようなちょっと怖い話も出てくる。 人工知能そのものと、人工知能の進化、来たるべき経済社会の未来予測、等々非常に興味深い内容で、これから我々が生きる社会を考える材料をくれる本だ。
よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ 清水亮
人工知能という言葉が、生活にどんどん近づいてきたなぁ〜という感覚を覚える今日この頃。著者の清水さんは経営者であり、有名なプログラマーでもある方。 その清水さんが、人工知能の最前線の研究者に行ったインタビューをまとめた本。IT初心者にもわかりやすく丁寧に説明がなされている。
よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ
- 作者:清水 亮
- 発売日: 2016/10/17
- メディア: 単行本
人工知能(AI)の実ビジネスへの活用をイメージするのに役立つ本
東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」 松尾 豊,塩野 誠
こちらも東大の松尾准教授と、経営コンサルタントとして有名な経営共創基盤の塩野さんによる人工知能をテーマとした対談をまとめた本。 人工知能とは?からそれがビジネスに与える影響について会話形式で書かれていている。
超絶できるビジネスマンの塩野さんが、松尾さんに人工知能について根掘り葉堀り聞いているのが肝で、人工知能のインパクトが浮き彫りになっている。
いまこそ知りたいAIビジネス 石角 友愛
グーグル米本社を経て、パロアルトインサイトという会社を立ち上げシリコンバレーを拠点にAIビジネスを経営する著者による本。
2年以上前の本ではあるが、AIをビジネスにどう適用してゆくべきか、という論点で事例や周辺情報が書かれており、読む側の想像を掻き立ててくれる本だった。
AIビジネスデザインという考え方を知る事ができ有用。当たり前ですが、貯めるだけでなく、データを使ってどうビジネスをデザインしてゆくか、益々問われる様になってきますよね。
AIビジネスデザインとは、「経営者や事業担当者とデータサイエンティストの間に立ち、AIビジネスを創造する仕事」である (P007)
こちらは続編ともいうべき書籍。自分のいる職場でAI導入の戦略を練りプロジェクトを社内で推進する人、AIを使って主業務のシナジー(相乗効果)を生み出す人を意味する”AIシナジスト”(*著者の造語らしい。)について詳しく書かれている。AIシナジスと向けのキャリアデザイン方法なども参考になる。
文系AI人材になる 野口竜司
文系AI企画担当を意識するにようになったのは、やはり少々前に流行ったこの本のも大きい。著者はZOZOのテクノロジー子会社でVPをされている方。
文系人材が「AIとの共働き」スキルを持ち、理系AI人材が対応できない業務を受け持ち、AIプロジェクトを手動して行く手引きがしめされている。
著者は「これからのビジネス人生をすべてAIに注ごう」と決心され、ゼロから最前線まで躍りでたとのこと。この「これからのビジネス人生をすべてAIに注ごう」との思い、我々も少しづつでも真似をして追いかけてゆきたいところだ。
今一番進化が激しい分野だけに、最新情報をどんどん更新してゆきます。
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